「市販のビールからパンが作れる・・・」
そう知った私は、いてもたってもいられず、ググり始めました。
でも市販ビールから、自家製ビール酵母を起こす方法を、詳しく解説している記事はほとんどありません。
おはようございます。ビールとハードパンが大好きなlove it! 編集部のアイです。
もう少し詳しくいうと、私が見つけたかったのは、市販のビールを使い、自家製ビール酵母液をストレート法で使い続けるためのレシピです。
そのビール由来の香味・風味をパンでも味わいたい…と思ったからです。
今回は実際に、何度も試す中から得られた方法を、紹介します。
動画も撮ったので、参考にして下さいませ。
ビール酵母液はストレート法で使うと、そのビールの個性が生きる
自家製天然酵母でのパン作りは、主にストレート法と発酵種法(元種法)の2種類があります。
先にその2つの方法を解説しますね。
- ストレート法
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培養した酵母液を、パンレシピの水分に置き換える方法
置き換える割合は、水分の30%〜100%など、酵母の活性とその他の条件によります
美味しいパンになれば、何%でも正解です酵母液の素になった素材由来の風味を楽しめます
- 発酵種法(元種法)
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培養した酵母液に粉を混ぜて、パン種(元種)を作る方法
市販のイーストでいう、中種法やポーリッシュ法、老面法などと呼ばれる方法です
酵母の活性ピークがわかりやすいので、使い時期が明確です発酵種にするので、素材由来の風味は薄くなりますが、熟成させる時間があるので、旨味が増します
以前、パンとビールの酵母について、記事にしたことがあります。
その記事に、ビール酵母とパン酵母は、同じ学名の株違いだという話を書きました。
学名:Saccharomyces cerevisiae / サッカロマイセス・セレビシエ
なのでビール酵母も、パン作りに絶大な効果をもたらす、エリート酵母です。
パンを焼く時に、ビールから培養したビール酵母をストレート法で使うと、ビアスタイルの個性がそのままパンに現れます。
黒ビールと呼ばれるビアスタイルはとくに、そのパワフルな個性が際立ちます。
ヴァイツェンなど白濁したビールは、わずかに甘みを感じ、すごく優しい風味になる。
ときにはお味噌のような、素朴な風味に仕上がるビアスタイルもある。
酸味のあるパンが苦手な方も、ビール酵母液のストレート法で焼くと酸味はないので、美味しく食べられますよ。
ビール酵母液の作り方
市販のビールからビール酵母を培養していく方法は、興味を持った方がいろんな情報を集め、試しているケースが多いようです。
つまり公式のように、決まったレシピはないってこと。
この動画は私がいろいろ試しながら、ほぼ失敗することなく作れるようになった方法を、収録しました。
ビール酵母液450g〜作るためのレシピ
- 無濾過のビール 300g
- 水(できれば硬水) 150〜300g
- 砂糖 or 蜂蜜 15g
- レモン汁 小さじ1くらい
*ビール酵母液に向くビール
1番のオススメは、濾過されていないビールですが、詳しくはこちらで解説しています。
* 水を150〜300gと幅を持たせた訳は・・・
基本的にはビール:水=1:1で合わせます。
水は酵母を活性させるために、必要不可欠な存在。
水分量を半量にしたのは私の好みです。
酵母液が出来上がりパンにするときに、よりそのビアスタイル由来の香味・風味を際立たせたいからです。
ちなみに水をまったく加えずに作る方もいるようです。
私はまだ試したことがありません。
* ポイント
日本の大手ビールメーカーは、高い濾過技術を持っています。
なのでよくあるラガービールは比熱処理であっても、酵母は濾過されています。
酵母がいない状態ですので、あえて無濾過のビール酵母が残っているものを選びます。
硬水がオススメの理由は、酵母はミネラル豊富の方が成長し活性が高まるからです。
水道水を使う場合、湯冷しにしてください。
少し専門的な話になりますが、ビール酵母は出芽酵母です。
出芽(成長)して分裂・・・これを繰り返し、酵母が増えていきます。
成長するには、糖分以外の栄養素も必要だからです。
レモン汁を加えるのは、酵母は弱酸性環境…で、活性が高まります。
(酵母の最適なpH環境は、弱酸性のpH4.0~6.0)
実際の作業
ガラス瓶やスプーンなどを煮沸消毒する
ビールの中に浮遊ている酵母や、ビール瓶の底に溜まっている澱を残さず、ガラス瓶に入れる
水、砂糖、レモン汁を加える
砂糖を溶かすように混ぜる
蓋をして、瓶を振ってもいいのですが、ビールの発泡力が強く吹きこぼれるので気をつけて!
28℃にセットした、ヨーグルトメーカーに入れる
1日に2回、蓋を開けて瓶をふり、酸素を取り込む
(保温器がない場合、25〜28℃の環境に置く)
スクラッチでビール酵母を培養する場合、3日〜6日ほどかかる
澱が瓶底に溜まる
香りや泡の出方などで判断する
以前、驚愕のスピードで酵母液が仕上がったことがありました。
ベルギーのトラストビール シメイを使ったとき、なんと5時間ほどで完成。
条件が良ければ、そんなこともあるんですよね。
ビール酵母液の経過時間による変化と完成の目安
まずは見た目の変化から。
ビール酵母液は見た目の変化が解りにくいのですが、泡の出方に大きな変化があります。
比べやすいように、動画を撮影しました。
同じように砂糖を加えていますが、泡の大きさや、出現の感じがまったく違います。
ビール酵母液を仕込んだ初日の泡↓↓↓
↓↓↓4日後、ビール酵母液完成時
ビール酵母液完成!
クリーミーな泡がふわっと上がってきます
香りはについては
黒ビールはカラメルのような、なんとも言えない深くて甘いよい香り。
白濁したビールなどは、ほんのり甘く優しい麦の香り。
ビール独特の苦味は消え、フルーティでとてもよいアロマが広がるようになります。
見た目と香りをもう少し詳しく書くと…
- 初日 ビール・水・砂糖・レモン汁、混ぜた後も正にビールの泡と苦味のある香り。
- 24時間後 変化は感じられない。
- 48時間後 澱(オリ)が出始め、香りが変わってくる。
- 72時間後 香りが変わってきてるけど、まだビールの苦い香り。
振るとシュワシュワと泡がで始める。 - 96時間後 ビール酵母液の表面が、何となく粘性がある感じになる。
さらに揺すると、ビールの泡とは違う感じの、粘性のある微細な泡が出るようになる。
香りが甘くフルーティに変わる。
☆砂糖を加えると、
シュワっと微細でクリーミーな滑らかな泡が出る。
ここで完成と判断。
・・・といろいろ書きましたが、初めての時は完成したかどうかが、解りにくいですよね。
そんな時は、ビール酵母液:粉=10g:10g くらいで元種を作ってみてください。
4〜8時間で2倍になればOKです。
もしも2倍に膨らまなければ、砂糖を5gほど加え酸素を取り込み、28℃の環境に12〜24 時間おいてみる。
失敗や未成熟の判断
発酵器やヨーグルトメーカーなど使うと、安定した温度環境が作れるので、ほぼ失敗することはありません。
保温気を使わない場合、酵母以外の腐敗菌などが優勢になってしまう環境になってしまうこともあります。
カビなどが浮遊してきたら、廃棄です。
また酵母を培養している途中経過では、なんとなくムッとした、良いとは言えない香りになることもあります。
この場合、すぐに捨てずに翌日まで様子を見てみましょう。
カビが出るわけでもなく匂いも悪くない場合、酵母が弱っていることも考えられます。
そんな時は砂糖など糖分を加えたり、別のビールを加えるなどして、さらに2・3日様子を見る必要があります。
実は濾過されたビールでも、ビール酵母液は作れるんです
酵母がいないであろう濾過ビールでも、作ることはできるんです。
(否熱処理の生ビール使用)
その場合、空中に浮遊している酵母が鍵になるので、無濾過のビールより、時間がかかります。
ビール酵母液のリフレッシュ
ビール酵母液も小麦粉を加え元種にすれば、その後は水と粉だけでついで行くことは可能です。
この場合、元種はビールの個性はどんどん薄まります。
その使い方でももちろんOKなのですが、ビールの個性を感じながら酵母を使うなら、ストレート法にしなくてはなりません。
ビール酵母液をリフレッシュさせ450g〜作るレシピ
- 無濾過のビール 300g
- 水(できれば硬水) 150〜300g
- 砂糖 or 蜂蜜 15g
- レモン汁 小さじ1くらい(無くてもいい)
残っている酵母液を捨て、澱だけ残す
画像の瓶底に溜まってものが澱です
澱が入っている瓶に、ビール、砂糖、水を加え混ぜる
28℃にセットした、ヨーグルトメーカーに入れる
1日に2回、蓋を開けて瓶をふり、酸素を取り込む
(保温器がない場合、25〜28℃の環境に置く)
1〜2日でリフレッシュ完了
澱がたくさん溜まっている
完了の目安は、スクラッチでビール酵母液を作ったときと同様です。
ビール酵母液は、冷蔵庫保管で1ヶ月ほど持ちます。
ビール酵母液をストレート法で使うには
パン作りのレシピの水分をそのまま、ビール酵母液に変えるだけ。
元種にして使うよりカンタンですが、発酵力はドライイーストほどは高くないので、イーストを併用すると安心です。
これも決まった方法はなく、作りたいパンの種類や酵母の新鮮さや活性力によっても変わってきます。
何度も作っていると解ってくるのですが、初めは実験のような感じですよね。
- レシピの水分すべてをビール酵母液に置き換える
- すごく高活性の酵母液なら、水分の60〜80%ほどをビール酵母液に置き換える
- リッチなパンや高加水のパンを焼くときは、ドライイーストを0.2〜0.3gほど併用する
- 完成時より時間が経っている時も、ドライイーストを併用する
私は高加水100%の "パン・デ・クリスタル" などを焼くときは、ドライイーストを併用しています。
べーカーズ%[1]にすると、0.1〜0.2%です。
編集後記
パンとビール好きの私は、ビール酵母で焼いたパンを片手に、ビールを飲むのが一つの楽しみです。
ビール酵母液をストレート法でパンを焼き、同じビアスタイルのビールを楽しむ。
とっても乙なものです。
今回はそのビール酵母液を、ストレート法でパンを焼く楽しみをお伝えしたくて、書きました。
地ビールを言われるクラフトビールは、酵母の澱が瓶底に溜まっているものが多い。
そしてビールそのものも個性が豊かです。
ビール酵母を作る(培養する)には、とても条件がいいです。
初めて作る時は、クラフトビールがいいかもしれませんね。
オンリーワンの美味しいパンを焼いて食べるという、楽しみが増えますよ。
ぜひチャレンジしてみてください♬*゜