ビール酵母からパンが焼ける!!!
ちょっとパン作りに詳しい人なら知っている、ビール酵母で焼くパン!
中世のヨーロッパでは、「ビールは液体のパン」とも言われていますね。
おはようございます。
ビールとハード系パンをこよなく愛する love it! 編集部のアイです。
今回は、パンを焼くための、市販ビールから起こす "自家製ビール酵母液作り" を紹介します。
(自家培養酵母とも言いますね)
パン作りのためのビール酵母を作るには、どんなビールを選べばいいのか・・・
ビールの種類は多種多様。
ではどんな特徴を持ったビールが自家製酵母を起こしやすいのでしょうか?
基本的に酵母は、植物や果物、穀類、いろんなものから培養して、酵母液を作ることができます。
なので、よほどでない限り、これはダメ・・・というビールはないかなと思います。
…そうは言っても、どうせなら成功しやすいビールを選びたいですよね。
オススメは、非加熱で酵母が残り白濁している小麦ビール
ポイントは・・・
- 非加熱で酵母が残って白濁しているビール
- エールタイプのビール
(上面発酵) - できるだけ新鮮なビール
ビアスタイルでいうと
- ヴァイツェン*
(小麦のビール、酵母が残っているので一番オススメ) - トラストビール/ベルギー
(瓶詰め後にも酵母を入れて熟成) - スタウト
(黒ビール好きさんにオススメ)
*ヴァイツェンは、濁りのある"へーフェヴァイツェン"と、透明の”クリスタルヴァイツェン”があります。
ここでのオススメは、"へーフェヴァイツェン”のことです。
ちなみに・・・市販のビールで、自家製ビール酵母を起こした中で一番早かったのは、トラストビールのシメイ/レッドでした。
ぬるめの湯煎にかけておいたら、スターター*も加えてないのに、5時間ほどで完成。
条件が揃うと、びっくりするほど簡単です。
しかも発酵力も強く、とても元気な酵母液ができました。
国産大手ビールメーカーの濾過技術はすばらしく、酵母がしっかり取り除かれている可能性大なので、できれば避けます。
とは言え、最近は国産でも無濾過のビールも販売しているので、それでもOK。
また各地にあるクラフトビール(地ビール)なら、新鮮なものが手に入るでしょうから良いですね。
そしてもう一つのポイントとして、ビールにはエールとラガーという、発酵方法が違うタイプがあります。
上記に挙げたビアスタイルはすべてエールビールです。
エールビールの酵母は、パン酵母と株違いなだけで学名は同じ
なぜビール酵母でパン作りができるかというと、ビール酵母とパンを発酵させるときのイースト(酵母)は、同じものだから。
- ビール酵母とは
-
ビールの素である"麦汁"を発酵させ、"ビール"にするという役割の微生物。
- パン作りにおけるイーストとは
-
イースト(yeast)=酵母
イーストは、発酵によって "パンを膨らませる役割" を持つ微生物。
もうちょっと詳しく言うと、どちらも学名は
"サッカロマイセス・セレビシエ" で、株違いなのだそう。
ビール酵母 ≈ パン酵母(イースト)
ラガービールの酵母は、エールビールの子孫で、他の種類の酵母との間にできたもの。
(学名:サッカロマイセス・パトリアヌス)
なのでパンを焼くために酵母を培養するなら、エールビールの酵母の方が向いている。
市販のビールから自家製ビール酵母の作り方
市販のビールから起こしたビール酵母を、パン作りに使えるようにする方法は、実はたくさんあります。
一般的にビールからスターター*を使わずに、ビール酵母を培養した場合、完成までは5日〜7日ほど。
既に何かしらのスターターがあり使えば、1・2日で完成。
今回は最短15時間で完成する方法を紹介します。
ビールの本場は、言わずと知れたドイツやベルギー。
知り合いのドイツ人が、ビールから酵母を高速培養してパンを焼いている・・・というので、方法を教えてもらいました。
- *スターターとは
-
すでにパン作りに使える酵母となっている酵母液
(フルーツの自家製酵母などでも良い)
自家製ビール酵母を起こすために用意するもの
- スクリューキャップの
ガラス瓶(500ccくらい) - キッチンスケール
- スプーン
- 新鮮なビール✻1:100ml
(非加熱) - 小麦粉✻2:15g
- 砂糖✻3:10g
✻1 ビール:オススメは小麦の白ビール。ヴァイツェンなど。
✻2 強力粉でも準強力粉でも良いですが、酵母が好きなのは全粒粉です。
✻3 上白糖やグラニュー糖、キビ砂糖でも良いです。
ビールから起こす自家製ビール酵母のレシピ
ガラス瓶、蓋、スプーなどを煮沸消毒して乾かしておく
ガラス瓶に、ビール、砂糖、小麦粉を加える
蓋をしっかり閉めて、すべての材料が混ざるまで振る
ガラス瓶の蓋を閉じたまま、暖かい場所で15時間〜20時間ほど放置
(理想の温度:25以上30度くらい…酵母の活性が高い温度だから)
約120グラムの活性ビール酵母の出来上がり!
ドライイースの代用として使えます。
ビール酵母を培養している間にビール液と粉が分離していますが、パン生地に加える前に、再度よく振って混ぜてください。
小麦粉500g〜1kgくらいのパンが焼ける!
目安として小麦粉500g〜1kgくらいのパンが焼けます。
大まかにですが、ハード系のパンならベーカーズパーセント*で、20%前後加えます。
ビールのスタイルや種類が違うこと、使う小麦粉も違うので、その環境により、酵母の発酵力の強さも変わってきます。
なので発酵時間も、環境によって変わってきます。
一般的に自家製酵母の方が、発酵に時間がかかるので考慮してください。
それと作るパンの種類によっても違うので、何度か試してベストな量を決めるといいでしょう。
- *ベーカーズパーセントとは
-
粉に対して他の材料の配合率を表したもの。
粉の総重量を100%とし、ほかの材料の分量を小麦粉に対する割合(%)で表します。
もしも、うまく発酵しない時に考えられること↓↓↓
- 使ったビールの酵母活性が良くなかった
- 温度が適正でなかった(1℃の違いで発酵が遅いこともある)
新鮮なビールには活性の高い酵母が含まれている可能性が高いので、製造年月日を確認して、ビールを選ぶのも良い方法です。
大手メーカー国産ビールは、濾過技術が高いので、酵母が極少のこともあります。
そんな時は時間が上記よりかかることもあるので、もっと長めに培養してみてください。
できるだけ一定の温度を保ってあげる方が良い。
温度がコロコロ変わると、元気に成長してたのに環境が合わず、動きが鈍くなってしまうこともあります。
腐敗菌が元気になってしまうような温度もあります。
温度設定できるヨーグルトメーカーや甘酒メーカーなどお持ちなら、28℃がベストです!
追記20230212
ヨーグルトメーカーを購入!
やはり自家製酵母を、安全に確実に自家製酵母を培養するなら必須だと感じ購入しました。
このヨーグルトメーカーは、まったく同じ機能で 甘酒メーカー も出ています。 使い方も同じ。
甘酒メーカーの方が売れているようですが、どちらでも良いと思います。
高活性の酵母が入ったビールはどこで手に入れる?
一番のオススメは、ブルワリー直送のクラフトビールを買うことです。
直送が良い理由は、クラフトビールは実は賞味期限も短く、保管温度などの条件も繊細。
品質管理を考慮し直送してくれるので、高活性酵母が含まれたまま届くんです。
スーパーなどでもクラフトビールは売っています。
けれどそこまでの配送環境によっては、酵母が入っているビールでも、酵母の活性が失われている可能性があるんです。
近年は、クラフトビールの直送や定期配送などのサービスも増えているので、そう言ったものを利用するのもいいかも!
私が利用したことあるサービスなど、3つ紹介します。
-
ビールの種類が豊富で、他サービスにはみられない内容の自由度も魅力的。
-
クラフトビールを1ヶ月~2ヶ月に一度、送料無料でご自宅にお届け。
-
全国のクラフトビールと、自宅にビールサーバーも欲しいなら、これ一択。
私がこれまで主にやっていた、ビール酵母の作り方を、参考までに紹介しますね。
材料は・・・
- ビール:200g
- 水:100〜200g(あればコントレックスなどの硬水がよい)
- 砂糖:約大さじ2
- モルトシロップ(なくてもいいです)
- レモンの絞り汁おさじ1くらい
- スターターとして、フルーツ等の酵母液を小さじ1くらい入れてもOK
作り方は・・・
- 以上を、煮沸したガラス瓶に入れて攪拌。
- 蓋をして、暖かい部屋に置く(25〜30℃)。
- 毎日1度、蓋を開けて酸素を入れ、蓋をしてシャカシャカと撹拌。
完成するまでの日数は、使用するビールの状態や、季節によって部屋の温度も違うので、半日〜7日くらい。
ビール酵母は、出来上がりがわかりにくいのですが、 ビールの香りとは違う甘いよい香りがしてきます。
とくにスタウトやシュバルツなどの黒ビールは、カラメルのような甘いフルーティな良い香り。
* 曖昧な時は、発酵種を作ってみます。
小さなガラス瓶を1つ用意。
ビール酵母液と小麦粉を、それぞれ10gほど入れて、攪拌。
2時間〜24時間待ち、完成していれば、2倍以上の高さに膨らんでくれます。
2倍になれば、酵母液は完成です。
ここで時間がかかっても、発酵種を複数回作るうちに、時間はどんどん短縮していきます。
スターターとして、たとえばレーズン酵母液を加えると、酵母の完成が早くなります。
けれど、そのようにすると、ビール酵母というより、レーズン酵母とビール酵母のハイブリッドになるようです。
・・・私はこの方法はあまり使いません。
もちろん、全く同じ素材のエキスがあればスターターとして使います!
自家製酵母というものは、これが正解!というものがあまりなくて、実験してみよう…くらいの軽い気持ちで、試行錯誤しながらトライするものなのかもしれませんね。
自家製ビール酵母、パン作りにどう使う?
イースト(ドライイーストなど)の代わり、作ったビール酵母液を使います。
自家製酵母でパン作りをするときの方法は大きく分けて2つ。
- ストレート法
- 発酵種法(中種or元種とも言う)
ストレート法は、起こしたビール酵母液をパン生地をミキシングする時、そのまま加えます。
パンを仕込むときに加える水分量を、必要な酵母液に置き換える感じ。
・・・パン作りの記事ではないので、詳しくは割愛。
発酵種法は、先にビール酵母液と小麦粉をまぜ、発酵が安定するように、あらかじめ発酵種を仕込んでから使う方法です。
上段で紹介した高速培養の方法では、まだ酵母の活性が弱い可能性があるので、②発酵種法にてパン作りした方が良いでしょう。
発酵種の仕込みは、1回より、2回から4回ほど繰り返した方が、発酵力が強くなります。
2時間で2倍ほどの高さまで発酵してくれれば、パン作りに使えます。
パンの発酵種の作り方は、考え方も方法もいろいろあります。
詳しくは後で、別ページで記事にしますね。
作ったビール酵母でパンを焼いてみた
パンをおつまみにビールを飲む・・・
私にとって、幸せな時間です。
ビール酵母液でパンを焼いてみたので披露します^^;
高速培養した銀河高原ビール(ヴァイツェン)の酵母を使い、発酵種を作ってから、パン生地をミキシング。
焼き上がったフィセルのクラスト[1]はカリッと、クラム[2]はしっとり、どことなくお味噌を思わせるような素朴な香り。
ほんのり甘さもあり、"これぞ自家製ビール酵母のパン!" と言う感じ。
私はリーンなパン[3]を、オリーブオイルと海塩で食べるのが大好きなので、言うことなしのお味でした♬*゜
ビールが先?パンが先?…ビールとパンの歴史
そうだ、古代のビールはパンを焼き、そこからビールを醸造していたんだった。
ビール醸造に関する最古の記録は、BC3000年頃のメソポタミアです。
日本ビール検定を受けたときに、ビールの歴史を勉強しました。
その頃のビールは "シカル" と呼ばれ、醸造方法は、
- 麦芽(発芽させた麦)を乾燥させ粉にする
- この粉でバッピルと呼ばれるビールブレッドを焼く
- バッピルを砕き、水を加えて混ぜ、固形物を取り除く
- ③の液体が野生酵母により、自然発酵しビールが出来上がる
当時のビールは、そのまま飲むだけでなく大変重宝された飲み物でした。
たとえば、
- 神様へのお供え
- 薬草や蜂蜜を入れて、薬や滋養食品にする
- 賃金の現物支給
- バッピルのまま遠征時の食料として携帯し、生水の飲めない土地では、ビールにして安全な水分を摂取
ちなみに古代のビールには、まだホップは使用されてなく、香味付にはルピナス・ウイキョウ・サフランなどが使われていました。
ビールのためにホップ[4]が使用されたのは12世紀、主流となったのは15世紀からです。
編集後記
ビール酵母って、そもそも麦芽を発酵させるために選ばれたエリート酵母なんです。
だからビール酵母を培養さえできれば、とても活発なパンの酵母になってくれる。
記事を書くにあたり、動画や写真掲載しようといつものようにヴァイツェンとスタウトを仕込みました。
でも…ヴァイツェンは失敗。。゚・ (><) ・゚。
これまではビール酵母液作りに失敗したことなかったけど、そういう時もあります。
それで新たに学んだ、ビール酵母の高速培養にチャレンジ。
20時間後、発酵力が弱そうな気がしたので、発酵種法でパンを焼きました。
実験のようなことをしながら、酵母の成長を待ち、パンを焼くことはとても楽しいですね。
この記事を読んで、興味を持っていただけたなら、ぜひ試してみてくださいませ。