サワードウを作るためのレシピは、限りなくあります。
どれも正解であると知った上で、どの方法でチャレンジするか…と自分で決めなくてはなりません。
でもね「自分で決めていいのよ」と言われても、余計に困ってしまう…なんて事ありますよね。
この記事で紹介する、ルヴァン種とサワードウの作り方は、初心者さんでも失敗しにくいレシピです。
おはようございます。
ビールとハードパンが大好きな、love it! 編集部のアイです。
パン作りに凝りだすと、必ず通る "自家製天然酵母" 。
私も知るほどにおもしろくて、その沼にずっとハマっています。
参考文献として挙げますが、
ロティ・オランの堀田誠著:プロに近づくためのパンの教科書 発酵編
この書籍のレシピ参考に、私自身が作りその様子を動画と写真にて掲載しました。
まずは率直に、サワードウ と ルヴァン種 の違いから紹介しますね!
- サワードウ・スターターの作り方
- ルヴァン種(ルヴァン・リキッド)の作り方
- サワードウとルヴァン種の違い
- サワードウ、ルヴァン種の継ぎ方 など・・・
サワードウとルヴァン種の違い
サワードウやルヴァン種を作ってみよう!と思った時、疑問に思うのが『サワードウとルヴァンって何が違うの?』ってこと。
私も初めてサワードウを作ろうと思った時に???となり、書籍などいろいろ調べてみました。
結論から言うと・・・
ルヴァン種もサワードウもパンの "発酵種" のこと。
たくさんある種類があるサワードウのひとつが、ルヴァン種です。
パンは元々欧州から伝わった物なので、フランス語・英語・ドイツ語などいろんな用語が混ざってマルチリンガル。
そして作り方も、同じかと思ったら少しだけ違うとか。
ベルギーにあるサワードウライブラリーには、140種類以上のサワー種があるそうです。
それ故に書籍で調べても、ネットで検索しても、基本はどうなのか?などが、解りにくいんです。
総称がサワードウ(Sourdough)その理由は乳酸菌
イーストが市場に出回る前は、フルーツや穀物に付着した酵母を、水と小麦やライ麦を使い培養し、発酵する力を持たせた「パン種(発酵種)」が使われていました。
これらの発酵種には、通常、酵母のほか乳酸菌や他の微生物も繁殖しています。
その乳酸菌などの微生物は、イースト単体で作ったパンとは違う、独特の美味しさもたらしてくれます。
酵母菌と乳酸菌と微生物が混在している
現在この発酵種を「サワードウ(サワー種)」と呼ぶのは、世界的に見ても乳酸菌活性が高い発酵種が多く存在するためです。
sour=酸っぱい
dough=生地、練り粉
ルヴァン種にも乳酸菌が含まれているので、サワードウの仲間となります。
サワードウ≒ルヴァン種であり、ルヴァン種⊆サワードウ
前提として、サワードウには広義と狭義の意味合いがあります。
広義では、穀物由来の酵母菌と乳酸菌、水によりできた発酵種をすべてサワー種と言う。
さらに果物由来の酵母液に、小麦やライ麦を混ぜ、発酵させた物も含まれます。
狭義では、サワードウ(サワー種)はライサワー種のことを言います。
これは仕込み初めから最後まで、水とライ麦のみで完成させた発酵種です。
どちらにしてもサワードウは、ぬか床のように継いで、半永久的に継続可能な発酵種です。
代表的なサワードウ(サワー種)の種類
などがある。
サワー種は世界各地、特に欧州では、気候など違いによる独自の変化を遂げ、多彩なバリエーションが生まれました。
ルヴァン種
フランス発祥のパンの発酵種。
ルヴァン(仏語:levain)とはフランス語で“発酵種”という意味。
フランスのパン屋さんは、主にこのルヴァン種を使用してパンを焼き、さらには100年越えのルヴァン種を継いでいる家庭もあります。
ルヴァン種の材料:小麦粉、ライ麦粉、水
小麦またはライ麦と水で仕込み、途中で加える粉を小麦粉を主にして完成させます。
ルヴァン種には、
- ルヴァンデュール(=ルヴァンシェフ)
硬めの発酵種(重量比 小麦:水=1:0.5〜0.7) - ルヴァンリキッド
液状の発酵種(重量比 小麦:水=1:1.0〜1.25)
があり、小麦の旨みがあふれ、時に酸味も感じられるのが特徴。
この記事では初心者でも使いやすい、ルヴァンリキッドの起こし方を紹介します。
ライサワー種
ドイツ発祥の発酵種で、ライ麦を美味しく食べるために考案されました。
ザワータイク(Sauerteig)とドイツでは呼ばれ、ザワー(酸っぱい)タイク(生地)と言う意味。
ライサワー種の材料:ライ麦粉、水
ライ麦と水で仕込み、最後までライ麦粉のみで完成させます。
パン作りに使用するサワードウ(発酵種)を、"サワード・ウスターター" と呼ぶ。
ライ麦を多く使うパンの生地を、扱い易くしてくれる科学的効果、力強く膨らます 凄いパワーも秘めている為、ライ麦パンには欠かせない存在です。
さらにライサワー種を使うと、ライ麦の風香味、しっかりとした強い酸味を感じられるパンに仕上がるのが特徴。
ライサワー種を起こすのは、難易度が高いと言われますが、ポイントさえ抑えれば初心者さんでも作れます。
作り方はこちらです。
ホワイトサワー種(サンフランシスコサワー種)
アメリカ西海岸発祥の小麦による発酵種。
歯応えのある硬めのクラストと、しっかりとしたクラムだそう。
日本の気候風土では、存在が難しい乳酸菌と酵母菌が主になる発酵種なので、現地のスターターを手に入れないと起こすことが難しいでしょう。
ホワイトサワー種を使ったパンは、酸味が比較的強く、小麦の旨味が特徴的です。
サンフランシスコでは、このパンを丸型に焼き中身をくりぬいて、クラムチャウダーを入れた「クラムチャウダー・ボールブレッド」が人気です。
パネトーネ種 (リエヴィト・マードレ / Lievito madre)
イタリア北部ロンバルディア地方発祥の、小麦主体の発酵種。
現地ではパネトーネ種という言葉は存在せず、リエヴィト・マードレ(Lievito madre)と呼ばれる。
日本の気候風土では、存在が難しい乳酸菌と酵母菌が主になる発酵種なので、市販のスターターを使用します。
昔ながらの方法で種起こし*を行なった発酵種を使い、パネトーネを作ることを目的とします。
やわらかい生地を高く膨らませているので、
上向きのまま冷ますとパンの重みで潰れてしまうから
*種起こしとは、パンを膨らませることができる微生物を、培養し増やすこと。
どんな粉で継いだかが重要・・・という考え方も
ここまでサワードウについて定義してきましたが、実はそんなに堅苦しく考えなくても良い、と言う欧州のパン職人さんもいます。
ルヴァン種を含むサワードウは、種起こしをするときの酵母は何でもいいのだそう。
たとえばレーズン酵母液を起こしても、穀物を発酵させても、長く継いでいけば結果として同じような種になっていきます。
どう言うことかというと、いくつかの発酵種を持っていても、環境と継いでいく粉由来でで発酵種は日々変化していいくからです。
ルヴァン種を作り、ライ麦パンを作りたいなら、ライ麦をフィードしてリフレッシュすればライサワー種として使えます。
次はルヴァン・リキッドとサワードウ・スターターの種起こしの方法です。
25〜28℃の環境で、"小麦粉やライ麦粉と水を混ぜる"を5日〜7日ほど、繰り返して完成させます。
基本的にはこれだけなのですが、実際に作ったところを画像や動画に収めました。
ルヴァン・リキッドとサワードウ・スターターの作り方をそれぜれ説明します。
*ヨーグルトメーカーを使い、温度環境を整えました。
ルヴァン種(ルヴァン・リキッド)の作り方
ルヴァン・リキッドは、"小麦粉やライ麦粉と水を混ぜる" を 5日〜7日ほど、繰り返して完成させます。
- ガラス瓶 2本
(500ml以上を推奨) - キッチンスケール
- スプーン・ヘラ
- 輪ゴム
- 余り種(捨て種)用ガラス瓶*
- ライ麦粉(中挽、細挽)*
- 小麦粉
(準強力粉 or 強力粉) - ぬるま湯(できれば硬水)
- 塩
*余り種(捨て種)用ガラス瓶:スクリーニングした発酵種を廃棄するなら必要ない
*ライ麦粉:中挽と細挽のどちらか一つだけにしたいなら、中挽の方が発酵力が強いです
ダブルキャップジャー
お手頃なライ麦粉なども紹介しますね
ルヴァン・リキッドの作り方手順
下表では、ライ麦粉を使用していますが、小麦粉全粒粉に置き換えても大丈夫です。
強力粉 or 準強力粉 だけでも可能ですが、精製されて含まれる酵母などの微生物が少ないので、初心者さんには起こすのが少し難しいかもしれません。
小麦粉・ライ麦粉・水のフィードとスクリーニングのスケジュール
1回目 | 2回目 | 3回目 | 4回目 | 5回目 | 6回目 | |
前回の発酵種 | ー | 50g | 50g | 50g | 30g | 30g |
ライ麦粉 | 中挽 70g | 細挽 50g | 細挽 25g | ー | ー | ー |
小麦粉 | ー | ー | 25g | 50g | 53g | 50g |
ぬるま湯 | 84g | 60g | 60g | 60g | 50g | 50g |
塩 | ー | ー | ー | 1〜2% | 1〜2% | 1〜2% |
発酵最適温度 | 28℃(混ぜ上げ温度:28℃) | |||||
発酵時間 | 約1日 | 約1日 | 約1日 | 9〜12時間 | 9〜12時間 | 9〜12時間 |
*塩は、腐敗菌の増殖を防ぐために入れる
ルヴァン・リキッドの重量比を1:1の比率にするためです。
粉:水=1:1にしておくことで、実際にパンの元種として使用する際の置き換えが、容易になります。
5・6回目の発酵種を減らしたのは、少ない発酵種に、フィードした方が活性が高まるからです。
煮沸消毒したガラス瓶の重さを測って、どこかに記しておく*
ガラス瓶にライ麦粉と水を加えて、よく混ぜる
蓋はガラス瓶に、軽くのせる程度にする(発泡してくるため、中から圧力がかかる)
できるだけ28℃の環境を用意して、24時間ほど放置
*ガラス瓶の重さを測っておくのは、スクリーニングする際に便利だからです
1回目の終わりは、発酵種に少しの気泡が見えて、かすかにふっくらする
香りは開始時とあまり変化なく、ライ麦の匂い
1回目の発酵種の上部をスクリーニングして、50g をキレイな瓶に移す
ライ麦粉と水を加えて、よく混ぜる
軽く蓋して、できるだけ28℃の環境を用意して、24時間ほど放置
2回目の終わりは、強い酸味に変わり臭い
発酵種はたくさん気泡を含み、2倍以上に膨らむ
2回目の発酵種の上部をスクリーニングして、50g をキレイな瓶に移す
ライ麦粉と小麦粉と水を加えて、よく混ぜる
軽く蓋して、できるだけ28℃の環境を用意して、24時間ほど放置
3回目の終わりは、前日よりはいいが酸味が強く臭い
発酵種は前回より、細かい気泡になり、それほど膨らまない
少しとろっとしてくる
3回目の発酵種の上部をスクリーニングして、50g をキレイな瓶に移す
小麦粉と水、そして塩を加えて、よく混ぜる
軽く蓋して、できるだけ28℃の環境を用意して、9〜12時間ほど放置のはずが
15時間、放置してしまった
酸っぱい香りが弱まる
4回目の終わりは、小さな気泡がちらほらで、とろっとして、ほぼ膨らまない
元気ない感じだったので、スクリーニング後、瓶を交換して、泡立て器を使い酸素をたくさん取り込む
4回目の発酵種の上部をスクリーニングして、33g をキレイな瓶に移す
小麦粉と水、そして塩を加えて、よく混ぜる
軽く蓋して、できるだけ28℃の環境を用意して、9〜12時間ほど放置
5回目の終わり、酸っぱい香りがまろやかになり、少しアルコール臭もする
表面に大小の気泡が気泡が見えるようになり、2倍まで膨らむ
ルヴァン・リキッドの完成!
この時点でパン作りに使えます
しっかり活性を高めたいので、ここでリフレッシュします
5回目の発酵種の上部をスクリーニングして、50g を残す
小麦粉と水、そして塩をを加えて、よく混ぜる
数時間で2倍量に膨らんだらルヴァン・リキッド(元種)リフレッシュ完了!
すぐに使わない時は、冷蔵庫で保管
サワードウ・スターターの作り方(ライサワー種)
サワードウ・スターター(サワー種)は、"ライ麦粉と水を混ぜる" を5日〜7日ほど、繰り返して完成させます。
- ガラス瓶 2本
(500ml以上) - キッチンスケール
- スプーン&ヘラ
- 輪ゴム
- 余り種(捨て種)用ガラス瓶*
- ライ麦粉(中挽)
- ライ麦粉(細挽)
- 小麦粉
(準強力粉か強力粉) - ぬるま湯(できれば硬水)
- 塩
*余り種(捨て種)用ガラス瓶:スクリーニングした発酵種を廃棄するなら必要ない
*ライ麦粉:中挽と細挽のどちらか一つだけにしたいなら、中挽の方が発酵力が強いです
サワードウ・スターター(ライサワー種)の作り方手順
ライ麦粉・水のフィードとスクリーニングのスケジュール
1日目 | 2日目 | 3日目 | 4日目 | 5日目 | |
前回の発酵種 | ー | 7g | 10g | 10g | 8g |
ライ麦粉 | 中挽き 75g | 中挽き 70g | 細挽き 100g | 細挽き 100g | 細挽き 40g |
水 | 75g | 70g | 100g | 100g | 40g |
塩 | ー | ー | 1〜2% | 1〜2% | 1〜2% |
発酵最適温度 | 28℃ | ||||
発酵時間 | 約1日 | 約1日 | 約1日 | 約1日 | 約1日 |
*塩は、腐敗菌の増殖を防ぐために入れる
煮沸消毒したガラス瓶の重さを測って、どこかに記しておく
ガラス瓶にライ麦粉と水を加えて、よく混ぜる
蓋はガラス瓶に、軽くのせる程度にする(発泡してくるため、中から圧力がかかる)
できるだけ28℃の環境を用意して、24時間ほど放置
*ガラス瓶の重さを測っておくのは、スクリーニングする際に便利だからです。
1日目の終わりは、発酵種に少しだけ気泡が見えて、わずかにふっくらする
香りは開始時とあまり変化なく、ライ麦の匂い
1日目の発酵種の上部をスクリーニングして、7gだけをキレイな瓶に移す
ライ麦粉と水を加えて、よく混ぜる
軽く蓋して、できるだけ28℃の環境を用意して、24時間ほど放置
2日目の終わりは、強い酸味に変わり臭い
発酵種は大小の気泡を含み、約2倍に膨らむ
酸化乾燥したからなのか、発酵種表層の色が少し濃くなっていた
2日目の発酵種の上部をスクリーニングして、10g をキレイな瓶に移す
ライ麦粉と水、そして塩を加えて、よく混ぜる
軽く蓋して、できるだけ28℃の環境を用意して、24時間ほど放置
3日目の終わりは、香りは前日よりまろやかになってきた
発酵種は少し気泡が見えるが、膨らみはなかった
3日目の発酵種の上部をスクリーニングして、10g をキレイな瓶に移す
ライ麦粉と水、そして塩を加えて、よく混ぜる
軽く蓋して、できるだけ28℃の環境を用意して、24時間ほど放置
・・・24時間しても、あまり変化がなく、さらに12時間放置しました
4日目の24時間経過後、さらに6時間経過後、約2倍に膨らむ
発酵種の気泡は大小混じり、香りはフルーティでマイルドな酸味になる
わずかにアルコール臭もする
完成!
この時点でパン作りに使えます
ライサワー種は、ルヴァン種より、ちょっと難易度が高いです。
活性の高いサワードウ・スターターに育てるため、5日目も表層部を、スクリーニングし、リフレッシュします。
この時スクリーニングした初種(捨て種)は、発酵種として、そのままパン作りに使ってしまいましょう!
しっとりとしたクラムにまろやかな酸味が美味しい
超・時短!クイック・サワードウの作り方
ドライイーストを利用して、ヨーグルトからサワードウ・スターター(サワー種)を作る方法です。
忙しくあまり時間がないときや、できるだけ簡単に作りたい…なら、この方法で、同じように美味しいサワー種が作れます。
もちろん完成後、継いでいくこともできます。
- ガラス瓶
(200ml以上) - キッチンスケール
- スプーン&ヘラ
- ホイッパー(使うかも)
- 輪ゴム
- ライ麦粉
(できれば中挽) - プレーンヨーグルト
- ドライイースト
- ぬるま湯
ドライイーストは、市販されているものならOK.
作り方
- ヨーグルト 25g
- ぬるま湯 25g
- ライ麦 50g
- ドライイースト 1・2つまみ
- 塩
上記を煮沸消毒したガラス瓶に入れ、酸素を取り込むようによく混ぜる
表面の高さに印(輪ゴム)をつけ、軽く蓋をして、暖かいところに置いておく
培養している発酵種の量が数時間で2倍になる
サワー種(元種)の完成!
すぐに使わない時は、冷蔵庫で保管
完成したサワー種(元種)に、作るパンレシピの必要量の粉と水をフィードして、2倍になったらパン生地に加える
塩は、この元種が完成して、冷蔵庫保管するときに1・2%加え混ぜておくと、腐敗しずらくなります。
このサワー種(元種)を継ぐ方法は、後述します。
パン・デ・クリスタル
大きな気泡はサワードウ由来
市販のイースト(生・ドライ)も、実は天然酵母
イースト=酵母
市販されているイーストは、天然の酵母の中から単一の酵母を、純粋培養したものです。
人工的に作られた酵母はありません。
元々は野生に存在した酵母の中で、パン作りに適したエリート酵母なんです。
なのでヨーグルトの乳酸菌の力を借りて、市販のイーストで作っても、サワードウ・スターターといえます。
ルヴァン種&サワードウ作り、共通の注意とポイント
天然酵母作りの容易さに順位をつけるとしたら、
- 柑橘系の果物やドライレーズン
- ルヴァン
- ライ麦のサワードウ
ライサワー種が一番、難易度が高いように思います。
粉と水を混ぜるだけだから、言葉にすればカンタンですが、元種が完成するまでは繊細です。
そこで成功へのポイントは下記です。
- ガラス瓶やへら、スプーンなどは、煮沸消毒して雑菌を無くす
- 粉・水を混ぜるときは、酸素を含ませるようによく混ぜる
- できるだけ温度を一定に保てる環境を用意する(25℃〜28℃)
- 変化はゆっくり起こるので、焦って何度も蓋を開けて確認しない
サワードウ・スターター(サワー種)作り失敗すると…
サワードウ・スターターを作った時、失敗してしまった経験が2度あります。
1度めはルヴァンリキッド、2度目はサワー種を作ったときで、どちらも初めてのトライでした。
ルヴァンの失敗は真冬の寒さで、保温はしていたのですが、一定の温度を保てず2週間経っても、小さな気泡がわずかにできただけでした。
サワー種の失敗は、春先のこと。
最終日にスターターの高さが2倍にならず、もっと時間をおけばいいかと置いておいたら、白いほわほわしたカビが…
すぐに気づいて、白カビを掬い取ったので、スターターを救うことはできたのですが、結局、新たに作り直しました。
2回の失敗時は、ヨーグルトメーカーを持っていなかった事もあり、温度管理が甘かったんですね。
やはり温度管理は重要です。
スクリーニングのやり方
スクリーニングとはふるい分けることで、パン作りに有用な微生物(酵母菌や乳酸菌)を選別します。
- 初めに粉(ライ麦or小麦)に水を合わせて、発酵種を作る
この時点では、良い微生物と好ましくない微生物(腐敗菌)の両方が共存し培養 - 2回目から、新たに粉(ライ麦or小麦)と水を加える前に、初めの発酵種の表層部をこそげ取り、瓶底のにある一部を取り出し新しい瓶へ入れる
- 3回目以降も同様
ルヴァン種も同様にスクリーニング
スクリーニングの度に瓶を変えなくてもいいのですが、より確実に種起こしをするために、清潔な瓶に変えましょう。
なぜ表層部を取り去るかというと、パン作りに有用な微生物(酵母菌や乳酸菌)はガラス瓶の底部の酸素が少ない場所に増殖しやすいためです。
表層部には、好ましくない微生物(腐敗菌)が多く集まるので、その部分を取り除きます。
表層部は乾燥気味になり、色が変わっている
(腐敗菌などが溜まりやすい場所)
これはルヴァン種の捨て種を1日目から集めた瓶です。
よく見ると層になっているのが解ります。
時間の経過とともに、発酵種は質感も変化。
スクリーニングを繰り返すうちに、発酵種に有用な微生物だけが残ります。
すると微少な雑菌にも強くなります。
スクリーニングした発酵種は、大きめの瓶に貯めておいて冷蔵庫保存。
すぐに使わないなら、冷凍も可。
パンケーキやチヂミ、クラッカーなどを作っても美味しく食べられます。
ちぎりパンなど作るときに、発酵種と微量のイーストを加え、使用するのも良いでしょう。
もちろん廃棄しても良いです。
捨て種で焼いたライ麦パン
捨て種と言う呼び方が微妙ですが、未成熟の発酵種なので、使い方次第でおいしくいただけます。
- ライ麦粉(捨て種) 約70%
- 強力粉 約30%
- 加水率 約80%
- 塩 約2%
- 微量イースト
ライサワー種ではなく、イーストを加え焼いたのですが、ライ麦の風味だけでなく、旨味もGood!
サワードウ(余り種や捨て種)で作るクラッカーのレシピ。
↓↓↓Youtubeにアップしています。
保温の方法
室温でも構いませんが、寒すぎると完成までに時間がかかり、暑すぎると腐敗する可能性があります。
そこで・・・
- 発泡スチロールの箱に、お湯を入れたカップを入れ温め、その中に置く
- 冷蔵庫の上など、暖かい場所に置木、タオルを掛けて保温する
- 発泡スチロールの箱に、氷や保冷剤を入れて温度を下げて置く
など、暖かくしたり涼しくしたり、工夫してみてください。
サワードウ作り、何故そうするの?
サワードウ作り、もっと少ない量から作るレシピってどうなの?
初めから最後まで、粉:水=15g:15g と言うようピもあります。
これでもサワードウは作れます。
捨て種をだしたくなくて、私も試したことがあります。
このような方法は、完成後しばらくの間は、サワードウ自体が不安定です。
何度もフィードしていくうちに安定してきます。
初心者のうちは、いろんな状況判断ができないと思うので、、あまりおすすめはしません。
なぜ28℃が最適なのか?
酵母菌と乳酸菌の活性温度は、4〜40℃。
とは言うものの、28℃が最適と言う理由はなぜなのか?
種起こしをするときは空気中に浮遊している、さまざまな微生物(酵母菌や乳酸菌、腐敗菌)が混入し培養されます。
ですが必要なのは、パン作りに有用な微生物であり、腐敗菌は増えてもらっては困ります。
微生物たちはそれぞれ好きな温度域や、餌となるものが違うんですね。
そのポイントに合わせた環境を用意することで、有用な微生物が増殖してくれます。
温度が上がったり下がったり極端に変わると、酵母菌と乳酸菌が増えにくくなったり、腐敗菌が有利になる温度域になってしまうこともあります。
・・・ということで、温度管理はとても重要です。
なぜ水は硬水がいいの?
ミネラル分が豊富なため、酵母が育つ助けになるから。
ご存知の通り、硬水の方がミネラル分が豊富。
また欧州の土壌は石灰質が多いのため、日本と違い硬水です。
(パンの発祥地の条件に近い水は、硬水の可能性が高い)
水道水でも酵母作りはできます。
けれど水道水には、微量とはいえ塩素が含まれているので、微生物は生きづらい環境といえます。
煮沸して湯冷しにするか、一晩汲み置きをしておくといいですね。
私は種起こしの時は硬水を使いますが、それ以外は湯冷しを使っています。
なぜライ麦を選ぶ時、中挽きなの?
ライ麦を粉として挽くときに、細挽きよりも中挽きの方が摩擦熱が少なくすむため、粉由来の酵母が多く残っているからです。
細挽きのライ麦は、種起こしの時、あまり元気がないことがあります。
できれば石臼で挽いたライ麦が理想ですが、手に入りにくい。
そういった理由から、ライ麦で種起こしをするなら、中挽きが良いでしょう。
サワードウ、ルヴァン種の継ぎ方(リフレッシュ)
種継ぎの要領は、ルヴァン種もサワードウ(サワー種)も同じです。
この段落では、まとめてサワー種と呼びましょう。
酵母は生き物なので、小麦粉と水を餌として与えます。
これを種継=フィード(feed)またはフィーディング(feeding)と言います。
リフレッシュと言うのは、酵母にフィードして活性を上げることです。
酵母は冷蔵庫に保管されている間は、半冬眠。
その場合、フィードした粉の栄養分は少しずつ食べるので、たくさん与える必要はありません。
難しく考えることはなく、ペットを育てるような感覚でフィードします。
時々、『酵母を飼ってるから餌をあげる』と言う方がいます。
ぴったりの表現で笑ってしまいしたが、ペットが元気ないときに、栄養豊富なゴハンをたくさんあげれば元気になるのと一緒です。
酵母の活動温度域は、4〜40℃。
そのため冷蔵庫の中では、半冬眠になっています。
ワイドマウスなので、混ぜたり取り出したり、洗うのも容易です
一般的な種継ぎの仕方(フィーディング)
基本のフィードは、
元種:粉:水=1:1:1
とは言っても、週末だけパンを焼いている…などの場合、サワー種がどんどん増えていってしまいます。
ですのでもう少し気楽にできる方法を、紹介しますね。
フィーディング方法1
2・3日に一度は冷蔵庫から出し、粉と水を少し加え、酸素をたくさん蓄えるようによく混ぜる。
その後また冷蔵庫で保管。
重量比で、粉:水=1:1 で与えます。
1:1にするのは、サワー種の比率を加水率100%にしておくためで、レシピを置き換える際、計算がしやすいからです。
1回に与える量は、例えば元種が100gくらいあっても、粉15gと水15g・・・と言う感じで、良いでしょう。
フィーディング方法2 (酵母は丈夫な生き物)
実は週に1度しかフィードしなくても、意外と大丈夫。
忙しい時、うっかり2週間経ってしまった…なんてこともありましたが、大丈夫でした。
酵母は元種としてしっかり育てば、丈夫な生き物なんです。
約1週間ほど放置すると、"フーチ" と言って、元種の上部に透明な薄茶色の液が溜まり始めます。
これは酵母がお腹すかせている…ってこと。
こうなっても液は捨てる必要はなく、混ぜてしまって大丈夫です。
(フーチは、酵母がアルコール発酵するときの副産物)
もしもフーチを混ぜるのがなんとなく嫌なら、表面の水分だけ捨てて、同じ量の水を加えてください(粉と水の比率が変わらないように)。
黒や赤などカビが生えてしまったら、迷わず廃棄です!
週1くらいでフィードするにしても、フーチが溜まってしまってからフィードするにしても、フィードする量は、重量比で 粉:水=1:1 になるように。
量はたくさんあげなくても大丈夫です。
フーチが溜まってしまっている場合、フィード後サワー種が2倍以上になったら、さらにもう一度フィードという感じで、複数回繰り返します。
こうするとサワー種のリフレッシュが強化され、活性が高まって元気を取り戻します。
元気なくて心配なら、酵母が目を覚ますまでそのまま室温において、膨らんできたら冷蔵庫で保管します。
フィーディング方法3 (パンを焼くとき)
サワー種を使用しパンを焼くときは、高い活性が必要です。
パンを焼く数時間前か、前日の夜に、サワー種にフィードしリフレッシュしましょう。
フィードして、サワー種が2倍以上になれば使い時です。
もしもフィードしてもあまり元気ないようなら、再度フィードします。
サワー種を別の瓶に大さじ1ほど取り出し、粉:水を多めにフィードしてみましょう。
重量比で、元種:粉:水=1:2〜5:2〜5
少ない元種に対して、粉と水を多く与えると、サワー種の活性が復活します。
酸味を極力抑えたいときは、繰り返し何度かフィードするか、
元種:粉:水=1:10:10
のようにすると、効果的です。
ちなみに…パンを焼く前日にフィードしたルヴァン種のことを、フェッドルヴァン (fed levain)と呼びます。
*リッチなパンを焼くときは、サワー種だけだと膨らみにくくなります。
そんな時はレシピに、微量0.2〜0.8gほどのドライイーストを、加えてあげると良いですね。
ライサワー種のフーデングだけは…
ライ麦で起こし、ライ麦だけでフィードしている元種は、好ましくない酸味が出てくることがあります。
環境により、酵母と乳酸菌のバランスが微妙に変割ってしまうからです。
目安としては5回フィードしたら、新たに作り替えた方が良いでしょう。
種継ぎ(フィーディング)の粉の種類は?
フィーディングの際、与える粉は茶色い粉、つまり栄養豊富なライ麦や全粒粉が好ましいと言われていますが、精白された強力粉や準強力粉でも大丈夫です。
その上で目的に応じて、使い分けると良いですね。
- 種継ぎ間隔が長いなら、栄養豊富な全粒粉 or ライ麦粉
- 栄養剤のように、加えた途端に活性が高まるのは強力粉 or 準強力粉
- より味わい深くする or 酸味を感じたいなら、全粒粉 or ライ麦粉
(ライ麦粉は細挽より 、中挽の方が酸味が強くなる) - 白いクラムのパンを作りたいなら、準強力粉 or 強力粉
- 食パンのような、膨らむパンを作りたい時は強力粉
ライ麦粉と強力粉を半々とか、全粒粉と強力粉を半々など、粉をミックスしても大丈夫です。
私は冷蔵庫保存しているときのフィードには、基本的に全粒粉を使っています。
早くリフレッシュたい時は、強力粉 一択です!
翌日焼く予定のパンに合わせて、粉を選んでもいい。
たとえば白い食パンを焼きたい時は、もちろん強力粉でフィードすればOK.
いつも全粒粉やライ麦で継いでいても、白い粉でフィードし活性化させたサワー種を使えば、希釈されます。
精白された粉でも栄養豊富(灰分の多い粉とは)
一般的に全粒粉などに比べ、精白された粉は色々な栄養成分(灰分[1])の含有量が少なくなっています。
ルヴァン・リキッドを仕込むとき、初めから白い粉だけで作ることも可能です。
このとき、灰分量の高い粉を選ぶとうまくいきやすい。
理由は灰分量が多いということは、酵母にとっても栄養分が豊富にあり、活発に育ってくれるからです。
フィードする粉で、味・テクスチャーが大きく変わるサワードウ
ルヴァンリキッド
- 全粒粉と強力粉の半々でフィード⇨全粒粉の粒が見える生成色
- 全粒粉でフィードしていたルヴァンに強力粉でフィード⇨希釈され乳白色
- 強力粉か準強力粉だけでフィード⇨白色
ライサワー種(サワードウスターター)
- ライ麦粉の細挽でフィード
- ライ麦粉の細挽と中挽を半々でフィード
- ライ麦粉の中挽のみでフィード
サワー種の完成後、ガラス瓶はいつ変える?
ガラス瓶の替え時ですが、これは確定した決まりはないんです。
…とはいえ、替え時の目安が欲しいですよね。
- 瓶の縁周りがサワー種が固まり、見た目にもキレイ出なくなった時
- リフレッシュを繰り返すタイミングのどこかで、定期的に変える
こんな感じでしょうか。
余り頻繁に変えるのは、かえって雑菌が入る可能性があるので、おすすめはしないです。
サワー種は何度もフィードしていくと、雑菌が繁殖できない環境になるために、その度に変える必要がなくなっていきます。
フィードする時は、スプーンなどもキレイに洗ってあればOKです。
保存容器はガラス瓶が良い理由
ずっとガラス瓶で…と書いてきましたが、中にはプラスチックのタッパーにサワー種を保存している方もいらっしゃいます。
これも確定した決まりはないんですが…
長期保存するなら好ましいのはガラス瓶です。
ポイントは3つ。
- プラスチックには様々な添加剤が入っているので、染み出すことがある
- サワー種は酸性なので、長期間の保存は容器が変化してしまう可能性
- ガラスは酸素、水蒸気などの気体を遮断する(多孔質硝子を除く)
絶対にダメ…という訳ではないので、パン焼き前のリフレッシュの時だけとか、上手に利用するのは良いと思います。
サワー種が増えすぎてしまったら
増えすぎてしまったサワー種のことを、余り種と言います。
余り種は、スクリーニングした発酵種(捨て種)と同様に使えば、無駄がなくなります。
ガラス瓶を余り種用に一つ作って、そこに入れておき、ピザ生地やマフィンなど作ると美味しく食べられます。
酸味が強く出てしまっているなら!
- チヂミの生地にすると、酸味のあるつけダレなので美味しい
- チーズを入れてパンケーキにしてもGood.
すぐに使えないなら、冷凍保管も可能です。
作ったサワードウに名前をつけましょう
西欧では、代々引き継いだ100歳以上のサワー種を、大切にメンテナンスしながら、使い続けている方も多くいるそうです。
その地方の気候風土、家庭の環境、そして使用する小麦やライ麦の違いで、サワー種に含まれる乳酸菌と酵母菌は違います。
"その家庭のサワー種" というのができるので、ペットのように名前もつけて大事にしています。
我が家のサワー種にも名前つけてます!
"粉雪" と書いて、"こゆき" ちゃんです。
サワードウ作りの参考図書や便利な道具たち
ガラス瓶の選び方
私が愛用している、ガラス瓶を紹介します。
"ル・パルフェ / ダブルキャップジャー" です。
- ワイドマウス
- 細すぎないので混ぜやすい
- 蓋が2つ(乗せるだけの内蓋と、しっかり閉める外蓋)
- 750mlサイズもヨーグルトメーカーに入れられる
ル・パルフェ / ダブルキャップジャー750ml
以前は100均で買ったものを使っていましたが、口が狭いのと、スクリューキャップでも液漏れしちゃうので、これではダメだ…と。
あるサワードウブレッドを紹介しているYoutuberさんが、Ball メイソンジャーを使っているの見て、良さそうなので探しました。
Amazonで売っているのだけど、割と高い・・・^^;
似たもの探しているうちに、ル・パルフェのダブルキャップジャーを見つけました。
ワイドマウスなので、フィーディングがしやすいですし、瓶の口径が大きめなのも混ぜやすく、取り出し易い…と画期的。
種起こしやリフレッシュの時は、酵母が呼吸し発酵種が膨らみます。
そこで瓶に内蓋だけ乗せておけるのもいい…瓶内の圧力が上がりすぎると、最悪、瓶が破裂しますが、その心配もありません。
洗うのも楽ちんです。
このダブルキャップジャーは、サワードウ作りやフルーツの天然酵母起こしにも、すごくオススメです。
ライ麦はどこで買う?
大きなスーパーなら小麦粉全粒粉くらいなら置いてありますが、ライ麦粉って見ないです。
近くにカルディとかあると扱っていることもありますが、少ない。
編集後記
自家製天然酵母を起こすのって、レシピに絶対の決まりはなくて、初めは誰も試行錯誤の繰り返し。
理科の実験のようで、気づくとはまっていました。
元来、興味を持つと探究心がググッと上がってしまう私。
基本的なことからしっかり学びたくなってしまうので、さまざまな書籍を読み漁ったり、作ってみたり。
いろいろなフルーツやハーブの酵母、酒粕酵母、ビール酵母、穀物の酵母を作ってきました。
初めは何も知らないから、サワードウとルヴァン種って何が違うのか、どうしてもそこが気になって。
さらにはサワードウ作りは 使う粉の種類や量など、初めての方にとっては疑問点が多く、迷う方が多いのも事実。
ネット上にもたくさんサワードウや、天然酵母についての情報はあります。
でもサワードウとルヴァン種の違いを、明確にしているページは見つけられませんでした。
いつかサワードウとルヴァン種についても、まとめてみようと思っていて、やっとここに記事にすることができました。
この記事が、少しでも読んでくださった方のお役に立てば嬉しいです。